ヴォイストレーニングの本などには、一日15分と書いてあったり、長い時間のトレーニングは厳禁というようなことも書いてあります。喉を傷めたり、疲れさせないためであったり、変な癖をつけないためということもあります。これらは指導している身としても歌い手としてもとても理解できます。しかし、それでも、ある一定の時期は量をこなすということも考えなければいけないと思っています。
根性論のように聞こえますが、一人でステージをこなすということがあると、ときには10数曲というプログラムになりますし、それが複数の公演であったりちがうプロダクションの公演がかさなっていると練習するだけでもかなりの時間をとられます。忙しい時期になるとこれが毎日になったり一日で複数の稽古があったりもします。その意味では数をこなすための体づくり、基礎体力、喉を傷めない発声、集中力、モチベーション、回復力、休み方などさまざまなことを自分のペースで身につけなければいけません。そしてこれらを淡々のこなしていけるくらいまでになるには、やはり量をこなせる力が必要です。たまたまその日だけ量をこなすのではなく、毎日こなすのです。これらは口でいうほど簡単ではありません。
特にモチベーションだったり、時間を確保するということは思っているよりも大変です。しかしこれらを続けられると次第にいろいろなことがわかってきます。
上達するだけでなく、自分なりのクールダウンや睡眠、健康管理などにも意識がいくようになっていきますし、どのような状態になると歌いすぎ、使いすぎているという自分なりの感覚が身についていきます。
量をこなせるような基礎力が、プロには必要になってくると思います。