著者は公認心理師で、自身も家族間でのトラブルやいじめ、故郷を襲った東日本大震災の影響などで精神疾患に苦しんだ経験を持っているのですが、その中でも著者が人間の悩みの大きな原因として重視しているのは、「心のエネルギーの枯渇」です。
確かに、精神疾患その他の悩みの原因として、過去のトラウマ、例えば歪んだ親子関係や学校でのいじめなどが考えられ、そこで思考や認知の歪みが起きることで、自分に自信が持てなかったり、自主性を持てなかったり、何をやっても楽しくないなどの悩みが発生するわけで、著者もそれらの原因を重視してはおります。
しかし、過去は最早変えることはできず、過去を恨んで自分を正当化(言い訳)しても自分の心は楽にはなれません。
また、人生で成功できようとできまいと、生きている限り「不安」はなくなりません。
そこで著者は現実的な問題解決法として、「不安に寄り添うこと」と、それを可能にするための「心のエネルギーの充実」を推奨しております。
心のエネルギーが充分であるときは、過去のことも良い思い出に感じられ、未来にも希望が持てるし、適切な問題解決方法も思いつけると言います。
逆に、心のエネルギーが不足しているときは、過去のことも忌まわしい思い出に感じられ、未来に絶望し、問題解決方法など思いつけないと言います。
心のエネルギーの補充のために、著者は栄養(食事)で補う方法を推奨しております。
また、万一心のエネルギーが枯渇してしまい、心が「炎症」を起こしているとき(=悩み苦しんでいるとき)には、それを何とか解決しようとせず、そのまま「そっとしておく」のが一番治りが早いと言います。
ここから先はまだ読んではおりませんが、発声や発語の際にも「台詞や音程、リズムを間違えないように」と不安に神経を尖らせてしまいがちですが、それを一旦止め、「間違っても良いからやってみよう」という姿勢で、ありのままの自分で動き始めると不安は縮小し(とは言ってもなくなりはしないが)、悩みは自ずと解決してゆくのだそうです。
年老いた母の介助のこと、お金のこと、これからの仕事のこと、自分には重たい課題が複数ありますが、まずはそれらに悩むことを一旦止めて、自分のありのままの姿と向き合い、質素でも栄養のある食事を摂り、休養を充分取りながら、今できることから積み重ねてゆきたいと思います。