地声、裏声、ファルセット、胸声、頭声、など、声にはさまざまな呼び方がありますが、基礎の基礎という面でいえば本来鍛えるべきなのは台詞のような声。大きな声、はっきりした声、滑舌のいい声ということにつきると思います。これは、ポップスもオペラ歌手もです。
お笑い芸人の人々に歌がうまい人が多いのは、与えられた時間で、笑いとインパクトを残すことをずっとやってきています。突っ込みの間、切れ味、声の張りなど稽古と現場両方で鍛えられた声は、現在の日本の芸能界では主力といってもいいのではないでしょうか。しっかりとした声で鍛えられたところから、それぞれの分野での発声のメソードが入ってくると、より効果が高いと思います。
世界的なソプラノ歌手のマスタークラスでの一コマをご紹介します。すでに劇場で歌っている若いソプラノ歌手にこんなことを言っていました。
「あなた、今全部ファルセットで歌っていたわね。歌いなおして」
「ファルセットでしたか。」
「それもわからないの。」
響きだけを求めると、声はどんどん軽くなり、喉も浮いてきます。
しっかりとした声の力と支えをともなった声の響きでなければ、このような状態を招いてしまいます。
体をしっかりと使っているという観点だけなら、お笑い芸人も声楽家に負けていない部分があるかもしれません。(♭Σ)