声を育てる上で私自身は日常のトレーニングとしてスケールやロングトーンの訓練やエチュードを常用していますが、それ以外に多く行うのは歌詞を読むということです。これは朗読や日常レベルの「読む」とは違います。劇場やホールで一番後ろのお客様にまで聞こえるレベルで読むということです。そして、それは力んでも吠えても叫んでもいけない。喉への負担をかけず通る声でしっかりと読むということです。歌の基本は喋りです。イタリアで昔からある「recitar cantando」という考え方、recitarは演じる。cantandoは歌いながらという意味になります。
つまり、喋るように歌い、歌いながら演じるということでしょうか。一般的には日常会話などで人は力みません(精神的なプレッシャーなどは別)。喉やさまざまな場所への力みがない状態で声を出せています。そこに大きなヒントがあると考えていいです。
歌うために何かを特別なことをするのではなく、しゃべる先に発声の発達があるということです。喋るように歌うことができると、聞いている人には歌詞がよく聞こえ、歌っている方も力みが少なく表現がやりやすい。まずはしっかりと大きな声で口を開けて明るい声で前に声を飛ばすように歌ってみましょう。喋っているときにミッキーマウスのような声になってはいけません。歌っているような声になってもいけません。言葉をしゃべっている声で前に飛ばすことをトレーニングしてみるとよいでしょう。