ヴォイトレレッスンの日々  

ヴォイトレに関わっている方とブレスヴォイストレーニング研究所のトレーナー、スタッフの毎日をとりあげていきます。

文化と時代

ゲーテエッカーマンとの対話の中で、「一人の天才よりも、その芸術の才能を見守った時代と民族こそが敬意を表されるべき」という趣旨の発言をしています(「ゲーテとの対話」岩波文庫)。その例として、悲劇というジャンルで大きなものを作った古代ギリシア人の優秀性と「現代ドイツ」(つまりゲーテの時代)の文化を軽視する状況について書いています。もちろん古代ギリシア奴隷制度に支えられており、一般市民であること自体が現代の我々の感覚からすると貴族に近いものであり、一概に比較することはできないでしょう。(そもそもヨーロッパというものの美しさ、文化、繁栄が、奴隷制度や「後進国」からの搾取に多くを負っているということも忘れてはならないでしょう。)

嘆いてばかりはいられませんが、現代日本もかなり悲惨な状況であると言わざるを得ないでしょう。文化予算は先進国の中でも際立って微々たるもので、文化は経済の枠内に組み込まれているのが現状です。つまり、売れればよい。売れているものはよいものである。AKB48ベートーヴェンより人気があるのでよい、というわけです。深い文化、芸術は長い時代、また世界の広い範囲でたくさんの人に影響を与えてきました。それらを学び、深め、伝えていく使命が、我々にはあるでしょう。みなさんには世界に影響力を与えるアーティストになってほしいものです。(♭∴)