ヴォイトレレッスンの日々  

ヴォイトレに関わっている方とブレスヴォイストレーニング研究所のトレーナー、スタッフの毎日をとりあげていきます。

ヴォイスレーニングの今昔

近年のヴォイストレーニングは、医学や化学とのコラボレーションが主流となってきました。これはよいことだと思います。目に見えない声という世界を視覚化したり、体がどう動いているのかをより具体的にすることで何をすべきかが明確になるからです。 しかし、一方で1950年代~1970年代などに活躍した声の黄金期と呼ばれるイタリアの歌手たちは現代のヴォイストレーニングでは否定されがちなことをやっている人も少なくありません。この世代の多くの歌手の伝記や本を読むと、戦争中は兵士として戦場に派遣されたり、捕虜となり敵国の収容所にいた歌手も多くいます。栄養状況もよいとは決していえないでしょう。声にいい食べ物悪い食べ物などと言っている場合ではなく、生きていくための食事だったと想像します。現在のヴォイストレーニングでは不要とされがちな腹筋運動なども、戦場にいくための訓練の一環で行った人もいるでしょうし、重い荷物や武器をもって日常が筋トレにようになっていたと思います。

現在ほど交通がよかったとも言えませんから、劇場から劇場へトラックの荷台で移動したり、一台の車ですし詰め状態で歌手たち同士で長距離移動したなんて話も多々あります。戦時中でも声を保ち続けるためには、現代のように空調付きのスタジオで練習とはいかなかったでしょう。しかし、この時代の歌手たちの声のすごさというのは現在でも色褪せず残っています。

現在では考えられない過酷な環境から、現在でも語り継がれる歌手たちが誕生していたすごさというのは、我々声にかかわる人間たちは目を背けてはいけないと思うのです。(♭Σ)