ヴォイトレレッスンの日々  

ヴォイトレに関わっている方とブレスヴォイストレーニング研究所のトレーナー、スタッフの毎日をとりあげていきます。

胸に声をあてる

声をトレーニングしていくと、指導者によってどこに声をあてるかということで違いが出てきます。「頭頂部に響かせて」「糸で引っ張られているように」「マスケラ」「軟口蓋」「前にだして」などさまざまですが、初心者はまずは胸に声をあてるということを意識してトレーニングしてみるといいと思います。ジャンルは考えず、その人がもっている声の基礎力という意味では胸に響かせるというのはとても重要です。声の基礎力の土台といってもいい。

声楽というジャンルが生まれたころは、この胸の発声というのはとても重要視されていました。例えば同じ音を早く歌うマルテッラートという技法があります。現代ではバロック作品を歌う歌手やカウンターテノールソプラニスタなどで聞くことがあります。マルテッラートの語源であるマルテッロは金槌という意味です。胸を金槌で釘をうつように叩くイメージで声をだす。これがマルテッラートと呼ばれる声楽技法です。その音の形がきたから胸をたたくのではなく、ある程度胸の音があるからこそ、その音形がきたときにマルテッラートの技術を使うことができるのです。

この胸の音はパヴァロッティマリア・カラスなどの声にも聞くことができます。パヴァロッティマリア・カラスの声というのは、その声を聞くと彼らの名前が浮かぶほど個性的です。単純に素晴らしい声ということでもあるとは思うのですが、胸の響きが聞こえると、その歌手の基礎の声が聞こえてきます。そうするとオリジナリティのある音色が生まれると考えます。その意味では胸に声をあてるということは自分のオリジナルの声をだすという考えにも通じる部分があるのかもしれません。