ヴォイトレレッスンの日々  

ヴォイトレに関わっている方とブレスヴォイストレーニング研究所のトレーナー、スタッフの毎日をとりあげていきます。

「海と毒薬」「沈黙」遠藤周作

遠藤周作は、私の「好きな」作家の一人です。「」がつくのは、この作家の作品は、読んでいてどんどんつらくなっていくのです。ストーリーが暗いから、つらくなるという単純な話ではありません。作中人物や事件やシチュエーションに引きずり込まれるというより、読んでいる自分の内面の弱さをえぐられて目の前に突き付けられるようで、つらくなるのです。「極限状態における人間の弱さ」を書く作家なのだと思います。同じ目にあえば自分なんかもっと弱いだろう、読みたくない、普通の感性の人ならそれは「嫌い」ということになるのだと思います。読みたくないはずなのに、たまにどうしても読み返したくなり、この作家の別の作品を読みたいと思ってしまうのです。

 

「海と毒薬」高校時代に学校の課題で読まされました。若いときに触れておいてよかったと思います。第二次大戦下の日本軍による外国人捕虜に対する人体実験の話で、一医師がさまざまな要因の中で、残虐な犯罪に手を貸さざるをえなくなるのです。

 

「沈黙」島原の乱のあと、キリシタン弾圧が苛酷になっていき、日本に密入国したポルトガル人司祭が、とらえられ、拷問にかけられ、信仰を捨てるまでの話です。日本人キリシタンも捕らえられ、残忍に処刑されます。海の中に生きたままはりつけにされたり、巻かれて海に沈められたりもします。ポルトガル人司祭に「キリスト教を捨てないとお前らの信者の日本人を殺すぞ」と脅すわけです。人が人にこれほど残虐になれるのでしょうか。

ぜひ読んでみてください。