ヴォイトレレッスンの日々  

ヴォイトレに関わっている方とブレスヴォイストレーニング研究所のトレーナー、スタッフの毎日をとりあげていきます。

パート譜の話

「楽譜」と聞くとどんなものを想像しますか。ひと口に楽譜と言っても様々な形態がありますが、歌の人が一番目にするのは、一番上に歌のメロディと歌詞が書いてあり、その下に右手と左手用の2段に分けて書かれたピアノ伴奏がある、という3段セットのものだと思います。あるいは、歌のメロディと歌詞、そしてコードネームだけが書かれたものもよく使われますね。

こういった楽譜の利点は、パッと見て何が同時に行われているかが把握できることです。同時に鳴る音は縦に並んでいるので、一目瞭然、というわけです。言い換えれば、少々耳はお留守にしていても、視覚的に音楽の流れがわかるのです。

これに対して、オーケストラの奏者が見ている楽譜は、自分の担当楽器が演奏する音だけを抜き書きした「パート譜」と呼ばれるものです。もちろん、他の楽器が何をしているのかは、パート譜を見ただけでは全くもってわかりません。では彼らはどうやって全体像を把握しているのでしょうか。

演奏中に、周りの音をよく聞いているのです。もちろん、事前にCDを聴いたりの勉強はしていますが、彼らは基本的に練習中に他の音に研ぎ澄まされた感覚を向けています。

実は古い時代の合唱譜も、パート譜に近い形態になっていて、皆、お互いの声を聴きあい、お互いの動きに耳の力で瞬時に反応せざるを得ないのです。歌い手にはこの感覚が足りないな、といつも考えさせられます。(♯∂)