ヴォイトレレッスンの日々  

ヴォイトレに関わっている方とブレスヴォイストレーニング研究所のトレーナー、スタッフの毎日をとりあげていきます。

「ひとりでしにたい」カレー沢薫(書籍)

タイトルが暗い希死念慮を感じさせるのでギョッとしますが、内容は書名から受ける印象とはまるで違います。

主人公は30代独身女性ひとり暮らし。特に大きな苦労もないため楽観的で、ほどほどに仕事と趣味に生きてきた彼女は、伯母の死をきっかけに将来について深く考えるようになります。

子どもの頃に憧れたキャリアウーマンの伯母は孤独死し、発見が遅れたため浴槽で「スープ」になっていたのです。このままでは伯母の二の舞である。結婚した方がいいのか、それとも?

結局、独身だろうが結婚していようが子どもがいようが、人は死ぬときに誰かしらの手を煩わせます。それよりも問題なのが、その日までよりよく生き続ける算段の人。収入は?保険は?医療は?介護は?葬儀は?公的支援は?

元気なうちに家族と話し合っておくことの重要性や、何よりも社会で孤立しないためのコミュニケーション作りなど、じわじわ考えさせられる作品...なのに、この作品の本質はギャグ漫画です。

今後死ぬ予定のある人は是非ご一読を。

著者のカレー沢薫氏は漫画家、エッセイストとして活躍し、エッセイは切れ味の鋭い視点と、オタク文化に精通した軽妙な文章で読ませます。漫画作品では、自身の発達障害について書いた『なおりはしないがましになる』も興味深いです。