ヴォイトレレッスンの日々  

ヴォイストレーニングに関わっている方と、ブレスヴォイストレーニング研究所のトレーナー、スタッフの毎日をとりあげていきます。

私の発声障害

15年ほど前に、声が出なくなったことがあります。きっかけは大病をして一か月ほど寝込んだこと。体中に炎症が起きる病気で、喉も例外ではなかったので、その間は歌いませんでした。その後、体が回復して歌おうと思ったとき、声が思うように出なくなっていたのです。まるでケガで長期入院していた人が、歩き方を忘れてしまったような状態でした。
そんな状態でも、歌わなくてはいけない仕事やコンサートは待ってはくれません。「そのうち何とかなるだろう」と楽観していましたが、私はそれらの舞台でことごとく発声に失敗して大恥をかいたのです。
まだ回復していないのかと病院で調べても、声帯や呼吸器の異常なし。でも声は出なくなっていく一方です。第一声を出すのが怖い。また失敗したらどうしよう。人前でしゃべるのすら怖い。そしてついにひと声も出せなくなってしまいました。すでに体の病気ではなく、精神的な発声障害に移行していたのです。
この状態から完全に脱却するのに、6年ほどかかりました。いろんな方法を試しましたし、いろんな人が救いの手を差し伸べてくれました。でも残念ながら、発声に苦労したことのない人のアドバイスは、あまり参考になりませんでした。
普通に歩ける人は、「人間はどうやって二足歩行しているのか」について考える必要はありませんし、歩き方を忘れた人に歩き方を教えるのは難しいでしょう。声もそれと同じです。私にとって一番役に立ったのは、同じ経験をした人のアドバイスとメソッドでした。
おかげさまで今はなんの心配もなく、歌えて喋れて舞台で仕事ができています。つらい経験でしたが、同じように困っている人の助けになればと思い務めています。
(♯∂)