ヴォイトレレッスンの日々  

ヴォイストレーニングに関わっている方と、ブレスヴォイストレーニング研究所のトレーナー、スタッフの毎日をとりあげていきます。

言葉、音声、場面を省くことで表現する映画監督 北野武監督

最近、脚本作家の倉本聰さんとビートたけし北野武)さんが大喧嘩をしたというニュースを見ましたが、事の起こりは北野さんが倉本さんの書いた脚本に記載の台詞を自分勝手に変えてしまったり、省いてしまったりしたことにあるということです。元々倉本さんは脚本の一字一句に意味を持たせ、脚本に忠実な芝居を目指すタイプであるのに対し、北野さんはアドリブでやり方を変えて「より良い表現方法」を追求するタイプであり、どちらが正しくてどちらが悪いかではなく、これはもう初めから両者は水と油のような関係であったと言わざるを得なかったようです。
特に、北野監督が頻繁にやるのは、製作の過程で余計な台詞やBGM、場面を極力省くことで、本当に観客に伝えたいものを表現するという手法です。「俳優 ビートたけし」としての仕事のやり方も、ほぼ同じようなものです。
北野監督の映画作品の常連は、そんな北野流のアドリブに十分対応できるか、或いは共感している人々なのだろうと考えられます。
北野監督作品の一つ「座頭市」に出演した女優の大楠道代さんは、再三の台詞の変更にも狼狽えず、「またやられたか」と笑って受け流すほどの余裕を見せていたそうです。
また、音楽担当の作曲家として数多くの北野作品に参加した作曲家の久石譲さんも、提供した曲が当初の打ち合わせとは違った使われ方になったときに、「勝手な変更をして申し訳ない」と詫びる北野監督に対し、「それは監督のお考えが正しいですよ」と理解ある応対をしたということです。
一字一句忠実に演じるやり方と、テーマを活かすために適宜変更してゆくやり方と、どちらを選ぶかはその人次第であろうと思われますが、いずれにしても脚本に書かれた言葉の裏に込められている真の意味をよく理解しておく必要があることに変わりはなく、その積み重ねがより深みのある表現を可能にするのだと考えられます。(YD)