ヴォイトレレッスンの日々  

ヴォイトレに関わっている方とブレスヴォイストレーニング研究所のトレーナー、スタッフの毎日をとりあげていきます。

「時代革命」(映画)

香港で作られた映画なのに、香港では上映を禁止されている記録映画。カンヌ国際映画祭などでサプライズ上映されている。2019年に起きた「逃亡犯条例改正案」に反対するデモをきっかけに、運動の本質を撮ろうとキウィ・チョウ監督が撮影したドキュメンタリー。もし、改定が行われれば、中国共産党政府に反対する香港人を、地元警察が何らかの容疑で逮捕し、中国本土に送ることが可能になり、中国が香港の民主派の人々を標的に、引き渡し協定を利用するのでは、と懸念されていた。デモは香港の人口の三割を占める200万人が参加したが、リーダーがいない、という特殊性を持つ。当初は、和理非(平和、理性、非暴力)派と勇武(武闘)派に分かれていたが、警察による暴力から両派が行動を共にしていく成り行きも描かれる。デモ隊が立法会(議会)の庁舎内に突入した際、冷蔵庫の飲み物代をきっちり置いていくなどの礼儀正しさに、真面目な人たちのデモであることがうかがえた。親子でも中国共産党に対する考え方が違う反面、仲間同士でパパ・ママなど疑似家族を形成する。デモは次第に普通選挙の導入など、五大要求を求める大規模デモとなっていく。そして、デモ参加者と香港警察との生々しい対立が起きる。普通の学生や会社員が、自由や民主主義を守ろうと、デモに参加する。前線の勇武派の子供たちを、警察の暴力から守ろうとする母親や高齢者も街に出る。警察との衝突で飛び交う催涙弾、ゴム弾、火炎瓶、放水車からの水を浴びると身体中が痛くなる、至近距離からの銃撃シーン、警察とヤクザがグルになり市民をめった打ちにした地下鉄駅の暴力事件、新聞などで伝え聞いていたものが目の前に映像として現れ、息を呑む。現在は国家安全維持法により、逮捕や密告を恐れる人々は、無力感に襲われていることだろう。外国人にも摘要されるという法律だから、外国で暮らしていても安全ではない。今まで当たり前にあった自由が突然奪われる、それは遠い国のできごとではなく、すぐそばで起きている。自由に物が言える生活しか知らない自分は、政府の容認することしか喋れない事態になった時にどうするか、デモの最前線に出られるか、長いものには巻かれろと、本心に蓋をして大人しく暮らすのか。正直に言って、もう若くはないから、穏やかに老後を迎えたい、と思う反面、心に蓋をして良いのか、とも思う。本当に、その時になってみないとわからない。その行動が、正しいかどうかもわからない。