ヴォイトレレッスンの日々  

ヴォイトレに関わっている方とブレスヴォイストレーニング研究所のトレーナー、スタッフの毎日をとりあげていきます。

宝生流の月並能で「盛久、茶壺(狂言)、羽衣」

宝生流能楽堂は東京ドームのすぐ近くにあり、他の流派の能楽堂と違い、少し大きめなのだそうです。でも能楽師たちの声は、広い会場に負けることなく声が届いてきました。

全ての幕を通して印象深かったことは、能楽師達の発声のよさです。舞台俳優をはるかに凌駕するいい声で、一字一句聞き取れます。お腹の底から息をはき、横隔膜どころか、へそ下の方を支えとし 、背中側の響きも用いて、大変深い声を出しています。響きもよく、豊かに体を鳴り響かせ、会場に声を届けることができているのです。

お能といえば800年ほどの歴史があり、その間ずっと、師匠から弟子に伝承されてきた芸能ですし、声の出し方も体系化され、よりいいものが受け継がれているのでしょう。

他の芸能とまじりあうことなく、昔のものをそのまま今に伝える中で、発声法も研ぎ澄まされていった結果なのではないかと感じました。また、お能の後に発展した江戸時代の歌舞伎の発音、お能以前の雅楽の歌とは、また違う独特な日本語の表現をしていることも特徴的で、これほど日本の歌の芸能は多岐にわたっており、時代によって似て非なるものなのだと思わせられました。

秘すれば花」「初心忘るべからず」といったフレーズでおなじみの、世阿弥が記した芸能の手引書である「風姿花伝」は、私たちにも大変教訓に満ちた言葉がつづられています。特に歌や芸事に携わる人には、芸事に携わる心がまえや、年齢とともに変化する自分との向き合い方、スランプとの向き合いかたなど、具体的に記されていて、一読の価値があると思います。(♯β)