イタリア人ソプラノの「エヴァ・メイ」によるレッスンの聴講に行きました。彼女は「コロラトゥーラ・ソプラノ」という声種でありながら、ヴェルディなどの作曲家の作品まで歌う人です。レッスンは主に大学院生のソプラノが受講しており、ドニゼッティやヴェルディのオペラアリアを歌っていました。年齢は21~23歳になります。細かく分ければ個人差がありますが、大きき分けて、「息の吸い方」、「歌っている内容の解釈ができているか」、「歌いすぎず、話すように歌うこと」、「楽譜に忠実に演奏すること」という4点を、ほぼ全員におっしゃっていました。
息の吸い方に関しては、吸う位置が浅い人、例えば、吸う時に肩が上がってしまうような人には、エヴァ・メイが生徒の腰を手で押さえて、「ここを意識しなさい」とおっしゃっていました。また、曲中にこまめにブレスを吸いすぎる人に対しては、「必要以上に細かく吸い過ぎると苦しくなるだけだからやめなさい」とアドバイスしていました。吸っているのかいないのかの判別がつきにくいほどのブレスしか吸えていないような人には、「息を吸えていない人には、吸わないと歌えないわよ」とおっしゃっていました。音大の大学院生であっても、日本人の行っているブレスはとても浅いのですね。
やはり、「呼吸って大切なのだな」と再認識しました。
「歌っている歌詞の内容を理解すること、その表現をすること」を心がけるようおっしゃっていました。色々な生徒に「何を歌っているかわかっている?」、「ここは、どのような場面?」とよく確認させていました。場面を理解することや、イタリア語で書かれているオペラですから、歌詞の内容を理解することはとても重要なことです。歌詞の内容の気持ち通りに歌わせていましたが、それで、生徒の声は変わっていきました。内容をしっかり把握することはとても重要ですね。大声で歌いすぎてしまうような人に対しては、「Parlare(話して)」としきりにおっしゃって、何度か歌詞を読ませて、それから歌わせていました。「歌う前に、楽譜を見る前に、読む練習を何度も行いなさい」と。
そして、楽譜通りではなく、リズムや音程や強弱が若干自己流になってしまっている人に対しては、「楽譜に忠実に」とおっしゃって、音符の長さから、アクセントの位置、強弱記号などを、楽譜通りに正確に演奏することを求めていました。「私達よりも作曲家の方がはるかにインテリジェントなのよ」と。更には、アクセントやスタッカートなどの場合を除き、「レガートに歌うこと」を非常に求めていらっしゃいました。
そして、変わったことに対して「気づいた?」と生徒に毎回確認され、「身体の感覚で覚えていくのよ」、「歌うのは楽そうにお客さんに見えていても、歌う人の身体は大変なのよ」とおっしゃっていました。
至極当然のことですが、やはり日本人としてこのような勉強を行うのは難しいのですね。地道な作業ですが、このようなことを続けることが、世界的なオペラ歌手の心がける勉強方法の一部なのだと思いました。(♭Я)