ヴォイトレレッスンの日々  

ヴォイトレに関わっている方とブレスヴォイストレーニング研究所のトレーナー、スタッフの毎日をとりあげていきます。

「マッサン」

NHK連続テレビ小説「マッサン」 主演:玉山鉄二
このドラマにつき、感ずるところをまとめてみたい。
マッサンには、スコットランドで本場のウィスキー製造技術を学んできたという強い自負がある。
しかし、それは彼の強みでもあり、弱みでもある。
マッサンは本場のウィスキーの風味に拘っていたが、「商売」ということを考えた場合、ウィスキーはお客さんに買って飲んでいただく「商品」であり、マッサンが飲んで自己満足に浸るために作るのではない。
伝統技術をいかに忠実に守っても、お客さんに買って、飲んで、喜んでもらえなければ何にもならない。
もっと早いうちにそこに気づいていたら、マッサンは「鴨居の大将」と末永く連携して、ヒット商品を打ち出し続けていたかも知れない。
後にマッサンのモデルとなった実在の人物はニッカウヰスキーの創業者となった。
「鴨居の大将」のモデルとなった実在の人物はサントリーの創業者となった。
昨年イギリスで世界のウィスキーのランキングが発表されたが、第1位はサントリーの「山崎」であった。
素直に日本人客の好みを熟知した上で、伝統技術を単なる「踏襲」ではなく「応用」し、山崎のきれいな水で作った結果が、世界一のウィスキーを生み出したのだ。
一方で、マッサンが目指そうとした本場のスコッチウィスキーは、10位にも入れなかったというのだから皮肉なものだが、それくらい顧客の満足を獲得するのは難しい。
伝統技法を学んだだけでは基本の中の本の一部をかじったに過ぎない。
さらに顧客に売って、その反響で打ちひしがれ、自分の商品や技法を改め、実地の応用問題が解けて初めて基本ができたと言える。本当の商売はここからだ。
入口に立ったばかりの自分を、完成品と思うような勘違いをしないように、常に自戒の念を持っておきたい。(YD)