ヴォイトレレッスンの日々  

ヴォイストレーニングに関わっている方と、ブレスヴォイストレーニング研究所のトレーナー、スタッフの毎日をとりあげていきます。

雅楽の教授法の話

私は子供の頃にピアノを習い、高校生になって声楽を始めたので、ずっと西洋音楽畑で生きてきましたが、数年間雅楽を学んだことがあります。雅楽西洋音楽には、共通点もたくさんありましたが、完全に頭を切り替えなくてはならないことも多かったです。何より驚いたのは、教授法です。
「笙」という楽器は和音を演奏します。たくさんの竹の束の中から必要な音の竹を選んで、指で竹管の穴を塞ぎ、息を通すとその音が出ます。大体、6音前後の音を一度に鳴らし、西洋音楽でいうところのクラスターコードが生じます。
初心者は指を間違えがちなので、しばしばおかしな和音を鳴らしてしまうのですが、それに対して先生は「違う」とだけ言います。「どの指が間違っていて、どこに置きなおせば正し和音になる」とは絶対に言わないのです。
私は西洋音楽の素養を持ったうえで臨んだので、間違った音は自分で気づいて修正できました。しかし、一緒に勉強していたのは寺社関係の人が多く、「違う」と言われても何が違うのかすぐにわからない。正解にたどり着くまでに長い時間をかけていました。ついていけずに脱落する人もいました。
随分遠回りだなぁと、はじめは感じました。でも、様子を見続けていると、試行錯誤して自分でたどり着いた正解は、一度身についてしまえば簡単には抜け落ちないようです。
西洋音楽の合理的なメソッドとは全く違う世界でしたが、1200年変わらぬ伝統を保持してきた世界には、そこの最適解があるのだ、と得心しました。(♯∂)